基本合意と和解について
2つの基本合意と和解条件や内容について
基本合意(1)
平成23年6月28日、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働大臣)との間で、和解についての基本的事項を合意しました(基本合意の成立)。
B型肝炎ウイルスを蔓延させた国の責任については、平成18年の最高裁判所の判決により明らかにされましたが、国は、その後も救済措置をとらなかったため、平成20年以降、全国の感染被害者と遺族が、解決を求めて提訴しました。
その結果、平成22年3月、札幌地方裁判所から和解勧告が出され、同年5月、ようやく国と原告団との和解協議が始められることになりました。しかし、和解協議が始まっても、国は、ウィルス感染者を広く救済しようとはしませんでした。そのため、弁護団、原告団は、より広い範囲の救済を求めて国との間で協議を重ねてきました。
そして、平成23年5月13日に、原告・国の双方が札幌地方裁判所の和解所見を受諾することを確認して、平成23年6月28日、国との間で基本合意書が締結されたのです。
この基本合意に基づき「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(特措法)が制定されました。
ここまでたどりついたのは、和解に向けて、また基本合意に向けて要請行動を続けてきた原告団の運動の成果です。原告団は、既に裁判を起こしている自分たちの救済だけでなく、後から訴訟を提起する方も含め、全ての肝炎患者の救済を願って運動し、要望を続けてきました。
その結果、基本合意の内容は、これから訴訟を提起する方にも適用されることとなりました。
最初の提訴から23年を経て、全体的救済措置への一歩を踏み出したのです。
基本合意構造
基本合意は、和解金額や和解の条件、和解の手続を定めるものですが、それにとどまるものではなく、国の責任と謝罪を明記し、今後、感染被害者を含む肝炎患者等に対し、国が恒久対策を講ずるよう努めること、及び本件B型肝炎ウィルス感染被害の真相究明、再発防止策の実施につき、国が最善の努力をすることを約束させています。
和解の条件について
提訴可能な方の要件の概要は、以下のとおりです。詳しくは提訴条件についてをご覧ください。
1.B型肝炎ウィルスに持続感染していること
2.集団予防接種を受けたことがあること
3.生年月日が昭和16年7月2日以降であること
4.出生時、母親がB型肝炎ウィルスに持続感染していないこと
5.他に感染原因がないこと
和解金
1.死亡、肝がん又は肝硬変(重度) : 3600万円
2.肝硬変(軽度) : 2500万円
3.慢性肝炎(発症後20年を経過していない方) : 1250万円
4.慢性肝炎(発症後20年を経過しているが、現在治療を受けている方) : 300万円
5.慢性肝炎(発症後20年を経過しており、現在治療を受けていない方) : 150万円
6.無症候性キャリア(二次感染者のうち、出生後提訴までに20年を経過していない方) : 600万円
7.無症候性キャリア(一次感染者、または出生後提訴までに20年を経過した二次感染者) : 50万円
こちらのQ&A記事も参考にしてください。
このほか、無症候性キャリアの方に対しては、和解成立後の定期検査、出産時の母子感染防止等に係る費用(社会保険給付や公費助成を除いた額)を国が支払うこととなっています。
基本合意(その2)
基本合意(その1)では未解決だった死亡又は肝がん、肝硬変(軽度)の発症から20年が経過してしまった場合の給付金について合意しました。
私たち、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団は平成23年6月28日に、国との間で基本合意を結び、これにより全国のB型肝炎感染被害者の権利救済に大きな道筋ができました。平成23年6月28日の基本合意に続き、平成27年3月27日、全国B型肝炎訴訟国弁護団と原告団は、国との間で「基本合意その2」を交わしました。
しかし、この基本合意およびその後成立した「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」では、死亡又は肝がん、肝硬変及び肝硬変(軽度)の発症から20年経過してしまった場合の取り扱いは決定していませんでした。
私たちは、札幌地方裁判所の仲介の下、この課題について国と協議を進め、平成27年3月27日、同裁判所において基本合意(その2)を締結し、次の内容の合意をしました。
(1)死亡、肝がん又は肝硬変(重度) (死亡後又は発症後提訴までに20年を経過したと認められる者)※ |
900万円 |
(2)肝硬変(軽度) (死亡後又は発症後提訴までに20年を経過したと認められる者のうち、現に治療を受けている者等) |
600万円 |
(3)肝硬変(軽度) (死亡後又は発症後提訴までに20年を経過したと認められる者のうち、(2)に該当しない者) |
300万円 |
※多中心性の肝がん(=肝内転移ではない肝がん)を再発した原告については再発時が起算点になります。この場合は再発時から20年経過していなければ原則どおり3600万円が支給されます。
民法の除斥期間(民法724条)の規定により、国が救済を拒否する可能性があったこれらの方について、合意による救済の途が開かれたことになります。