検証会議について
真相究明と再発防止のため「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会(通称:検証会議)」を設置
1.検証会議の設置
B型肝炎は、国が予防接種の際の注射器の使い回しの事実を知りながら適切な指導をしなかったことにより爆発的に患者数が増えてしまいました。なぜこのようなことが起こったのか、2度とこのようなことが起こらないようにするにはどうすればよいのか、弁護団と原告団は真相の究明と再発の防止を国に求めました。
そして弁護団と原告団は2011年6月11日に国と和解に向けた基本合意を締結した際、国にB型肝炎問題の「真相究明」と「再発防止」を約束させました。
この約束により設置されたのが「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」(通称「検証会議」)です。検討会議には原告団と弁護団からも委員が参加し、裁判で明らかにされた国の責任を前提にして実際にどのような医学的な研究・報告が行われていたか、国や地方自治体あるいは医療従事者の認識はどうだったのか等について調査・研究した上で再発防止策が検討されました。
2.検証会議による提言
①国の問題点の指摘
2013年6月18日、検証会議は「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の再発防止策について」と題する提言をまとめました。
提言では、まずB型肝炎感染拡大の原因として国の姿勢、自治体及び医療従事者の姿勢、先進知見の収集と対応、事例把握と分析・評価、現場への周知・指導の徹底、の5つの問題点があったと指摘し、とりわけ国の姿勢について「厚生労働行政はリスクの認識、管理、対応の観点から振り返った場合、歴史的に結果が重大であるが発生頻度が低いと考えられるリスクの把握と対応に不十分又は不適切なところがあったと考えられる。特に予防原則の徹底が不十分で、リスク認識が不足し、また、適期に更新されず、行政としての対応が適期になされなかった国の体制と体質が今回の大きな問題であったと考える。」と指摘しました。
②これからの国の姿勢
次にこれからの国の姿勢として「国は国民の生命と健康を守ること、そしてそれを通じて個人の尊厳と人権を守ることを最大の使命として厚生労働行政に全力を尽くすべきである。このため、十分な情報・知見の収集、分析、評価とそれに基づく適切な対応を取ることができる体制を常に備えていくべきである。省としてこれまでの組織・体制の問題点を洗い出し、十分な改善策を講じることが求められる。こうした使命を果たす一環として、国は、リスクの認識・管理・対応において、結果が重大だが発生頻度が低いと考えられるリスクに対応できるだけの情報収集・分析・評価のための体制の充実とシステムの整備が求められる。」として、国及び厚生労働省の組織・体制の改善とリスク対策のシステム整備を求めました。
③再発防止策
さらに具体的な再発防止策として、国に対し以下の3項目を提示しています。
ⅰ 先進知見の収集と対応
予防接種担当部局の強化、国と連携する国立感染症研究所等の機関の充実・連携強化、厚生科学審議会内の予防接種評価制度・検討組織の充実、厚生労働省内での予防接種担当部局と医療事故・医療機関を所管する部局との連携強化などを求めています。
ⅱ 事例把握と分析・評価
国による自治体・医療機関の事故情報の調査・整理、自己情報を公開の評価・検討組織において評価し対策を検討すること、自治体への注意喚起等情報の共有、各行政機関の間での情報共有するための体制充実などを求めています。
ⅲ 現場への周知、指導の徹底
先進知見を踏まえたテキスト作成、メールマガジン等の様々なツールを用いた情報共有システムの構築、市町村と保健所・医師会との委員会設置、各自治体での先進的取り組みの情報収集と周知などを求めています。
④第三者組織に向けた議論
また、弁護団と原告団の委員は厚生労働省から独立した立場から、厚生労働行政の事故等について情報収集・調査・分析・評価を行い、事故等の対策を厚生労働大臣に提言する組織である「第三者組織」の設置を提案しましたが、検証会議では慎重な意見もあり、提言では賛否双方の意見を併記した上で「再発防止策を全うするための組織のあり方の議論を続ける機会や場を設ける必要がある」とされました。
3.さらなる検証の必要性
検証会議では、国が1988年の通達で予防接種における注射筒の取替等を指示したことをもって検証の対象を同時期までに限定すべきとされました。しかし国は被害が生じていることを知っていたのですから、被害の実態調査や被害拡大の防止に取り組むべきでした。1988年以降の国の対応を検討し、国が被害の把握・救済に向けて何もしなかったことや「国の隠蔽体質」をより明らかにすることが真の「再発防止」のために必要です。
また、国がB型肝炎の特性を十分研究し早期に正しい対処をしていればB型肝炎の感染拡大を回避することができたと考えられます。検証会議ではこれらの問題を踏まえた感染症対策のあり方を検証するまでには至りませんでした。実効性のある再発防止策のためにはこれらの問題についても検証する必要があります。
4.最後に
このように、検証会議による提言の具体的内容を国が真摯に受け止め実行するかを監視し第三者組織の設置を国に求めていく必要があります。また、検証会議により明らかにされなかった問題についてさらなる検証を続ける必要があります。
当弁護団は今後も国、厚生労働省と協議を続け、B型肝炎を含むすべてのウイルス性肝炎問題の解決に全力で取り組んでいきます。